「多数決で決まったから、それに従いましょう」
日本の教室では、そんなフレーズが当たり前に使われています。けれども、この言葉の裏側にあるのは、本当に民主主義なのでしょうか?
元麹町中学校校長・工藤勇一氏は「教室における安易な多数決が、政治への関心を育てない要因になっている」と指摘します。
安易な多数決が生む“乱暴な民主主義”
「団結を目標にしよう」という学級会は、一見協力を促すようでいて、団結できない子の声を置き去りにしてしまう危険性を含んでいます。
社会には障害を持つ人や少数派が存在します。にもかかわらず、話し合いの場で多数決に偏った決定を繰り返すことは、排除の空気を再生産してしまう可能性があります。
特別活動が育む“合意形成と実践”の力
文部科学省の学習指導要領でも、特別活動では「合意形成と実践」が強調されています。
A案とB案で意見が分かれた時こそ、民主主義的な話し合いが必要になります。誰がどの案に困っているのか、なぜ困るのかを掘り下げる時間が、政治への関心と関与を育てる教育につながるのです。
教室で育む折り合いの力
話し合いとは、単なる意見交換ではなく、違いを受け止めたうえで新しい答えを探すプロセスです。そこで大切なのが「折り合いの力」です。
具体的には:
・合体させる:異なる案の良い部分を融合して新しい案を作る
・折衷案を練る:互いの希望を調整して妥協点を探る
・譲る判断:こだわりを見極め、目的に照らして譲る姿勢を持つ
・目的に戻る:「何のための話し合いか?」を再確認する
これらの力を日常の教室で育てることが、将来の市民意識を培う土壌になります。
民主主義を育てる場所としての学校
議会制民主主義は時間も手間もかかります。それでも、子どもたちが「納得するまで話し合う経験」を積むことで、大人になっても政治に関心を持つ可能性は広がります。
教室は民主主義を学ぶ最初の場所。教員はその設計者です。話し合いの問い方・進め方を少し変えるだけで、教育の質はぐっと変わります。
まとめ:誰一人置き去りにしない話し合いから未来が始まる
多数決には便利さがあります。しかしその使い方によっては、誰かの声を排除する結果につながることもあるのです。
「折り合いをつけながら納得する話し合い」を、日常的に積み重ねること。それこそが政治を身近に感じ、より良い社会を自分たちでつくろうという力につながるのではないでしょうか。
明日は投票行って外食してきます。
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